カバーのモデルは Jed Johnson (1948–1996) で、ポラロイドでウォーホルが撮影した。
インナースリーブのモデルは、ウォーホルのアシスタントだった Glenn O'Brien (1947–2017)である。
◆ ウォーホルがデザインしたのか?
1969年、ウォーホルがミック・ジャガーとパーティーで同席した際、本物のジッパーを使うアイデアを提案したという。
実際にデザインしたのは、クレイグ・ブラウン(Craig Braun)である。
直接本人へ確認のメッセージを送ったら、すぐに「私がデザインしたよ!」という返信があった。
Herb Lubalin と Tom Carnase とも仕事をしたという。
つまりコンセプトはウォーホル、デザインはブラウンである。
ブラウン氏の作品を見ると、なんと Quincy Jones – Smackwater Jack, 1971 がある。
マグリットを彷彿させるロマンティックなカバーアートで、フォントに興味を持ちはじめた頃は、このアルバムで使用されたフォントが分からず、血眼になって探したものである。
※Bowfin Printworks の Michael Yanega 氏から Phil Martin の Design という書体であることを教えていただいた。
◆フォントは Kabel なのか?
ブラウン氏のメッセージでは、Cheltenham Medium か Regular をスタンプにして使ったという。
確認すると、Kabel Heavy (デジタルフォントは Black に該当)が使われたものと、チェルトナムが使われたものが存在する。
事情により写真が差し替えられたスペイン版ではカベルが使われている。
それでこのカベルであるが、ルドルフ・コッホ(Rudolf Koch, 1876–1934)というタイポグラフィー史において極めて重要な人物によるデザインであるが、日本では人気がないようである。
コッホの遺作展に感銘を受けた Hermann Zapf は、コッホの息子パウルのところで働いた。
「チェルトナム」には様々な人々が関与している。 インガルズ・キンボールが NY で印刷会社 Cheltenham Press を設立。 1896年、同社の為に建築家バートラム・グッドヒューがプロトタイプを作成し、最後にモリス・フラー・ベントンが仕上げを行ったようである。 1899年からはじまった鉛活字のカッティングは、1902年まで続いた。 『Typony Core 6』には変わり種のスワッシュが掲載されている。
Typony Core 5
Typony Core 6
モンセン欧文書体大字典
Cheltenham Italique
via: letterlibrary
The Rolling Stones – Sticky Fingers, 1971
Concept by Andy Warhol, Designed by Craig Braun
スタンプにした Cheltenham Medium を使用した。 Kabel が使われたバージョンが有名か?
以下、2018年7月26日に執筆したもの。
◆ The Rolling Stones – Sticky Fingers, 1971
本日7月26日はミック・ジャガーの誕生日ということで、スティッキー・フィカンガーズのデザイン秘話を。 アンディ・ウォーホルが手掛けたことで有名なアルバムで、ウォーホルに支払われたギャラは1万5千ポンド(現在の金額で約15万ポンド~20万ドル相当/約2,200万円)。 このアルバムではじめて John Pasche (1945–) による舌のロゴ ("red lips", "lips & tongue") が使われた。
カバーのモデルは Jed Johnson (1948–1996) で、ポラロイドでウォーホルが撮影した。 インナースリーブのモデルは、ウォーホルのアシスタントだった Glenn O'Brien (1947–2017)である。
◆ ウォーホルがデザインしたのか?
1969年、ウォーホルがミック・ジャガーとパーティーで同席した際、本物のジッパーを使うアイデアを提案したという。 実際にデザインしたのは、クレイグ・ブラウン(Craig Braun)である。 直接本人へ確認のメッセージを送ったら、すぐに「私がデザインしたよ!」という返信があった。 Herb Lubalin と Tom Carnase とも仕事をしたという。 つまりコンセプトはウォーホル、デザインはブラウンである。
ブラウン氏の作品を見ると、なんと Quincy Jones – Smackwater Jack, 1971 がある。 マグリットを彷彿させるロマンティックなカバーアートで、フォントに興味を持ちはじめた頃は、このアルバムで使用されたフォントが分からず、血眼になって探したものである。 ※Bowfin Printworks の Michael Yanega 氏から Phil Martin の Design という書体であることを教えていただいた。
◆フォントは Kabel なのか?
ブラウン氏のメッセージでは、Cheltenham Medium か Regular をスタンプにして使ったという。 確認すると、Kabel Heavy (デジタルフォントは Black に該当)が使われたものと、チェルトナムが使われたものが存在する。 事情により写真が差し替えられたスペイン版ではカベルが使われている。
それでこのカベルであるが、ルドルフ・コッホ(Rudolf Koch, 1876–1934)というタイポグラフィー史において極めて重要な人物によるデザインであるが、日本では人気がないようである。 コッホの遺作展に感銘を受けた Hermann Zapf は、コッホの息子パウルのところで働いた。
第一次世界大戦に従軍したコッホは、ケーブルを敷設する作業をしていたという。 カベルはドイツ語で電線(ケーブル/英: cable)のことで、この体験が書体名に由来しているかも知れない。
チェルトナムは、印刷会社 Cheltenham Press の為に建築家バートラム・グッドヒューと天才モリス・フラー・ベントンがデザインした書体である。 古今、Helvetica や Futura より使われているのは、ベントンのフォントではないだろうか。 また、Tom Carnase のフォントを見ると、ベントン系譜の王道のタイポグラファーだということがよくわかる。
現在、ブラウン氏は俳優としてデニーロやヒュー・ジャックマンと共演し活躍している。
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